ブログなのだろう

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阿波や壱兆の話

 

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先日、東京に行った。

妻の研修に付きそう形で、ついでに観光もかねて朝から飛行機に乗った。1泊2日を満額使いきるため、早朝の便で羽田に。さすがに早すぎた8時半着。まだどこも開いてない時間だが、あらかじめ先週2人で観ていた「セブンルール」という番組で紹介されていた素麺屋が24時間営業ということを知っていたので東中野に直行した。

 

京都も暑いが、東京も暑い。うだる暑さは日本列島を席巻中で店は駅前という近さなのに、無駄に道を間違えほんの一角ずれただけでもう汗だく。はからずも、冷たい素麺をつるりと楽しむ準備は万全になった。テレビで観た店頭を見つけただけでキャッキャ騒ぎながら入場。しかし朝も早いのに満席。少し待って席に落ち着く。

 

妻「まずビールやね。」

私「研修ちゃうんか?」

妻「あかんの?」

私「とりあえず生2つ~」

 

メニュー表を見る。メニュー数は多すぎても少なすぎてもよくない。こちらは適度なバリエーション数で選ぶのも楽しい。王道は田舎仕立てなのだろうが、映えるのはやはりすだちのやつ(写真参照)か。妻が早々と田舎仕立てを選択したので自信をもってすだちを注文。そしてカンパイ。

 

 

常に大きな寸胴に火が付いているせいもあって涼しいとは言えない店内。素麺だからささっと出るのかと思いきや、ひとつひとつ丁寧に作られている様子で適度に待った。なるほど冷やしはひと工程多くなるのか。お待たせしましたと素麺が登場。キラキラ光るお出汁の色がきらびやかだ。

 

まずはお出汁をゴクリ。色的に関西出汁を思わせたが、結構しっかり味が強い。この暑さで汗ばむ身体にはちょうどよいか。すだちがのさわやかさが心地よい。麺をたっぷりすくってずるずる。普段食している素麺よりも太く、冷や麦より少し細い印象の口当たり。食感はコシがあって、食べ応えがあり「お昼ご飯」として単体で機能する。これは大盛りにして正解だった。

 

薄くスライスされたすだちは店員さんいわくそのまま一緒に食べちゃってということなので皮や種ごとパクリ。種を咀嚼すると酸味、苦みが段違い。風味がピーキーになりすぎるが夏ならこれぐらいがさわやかだ。

 

妻が田舎仕立てと交換してくれとジェスチャーゲームしてくるので快諾。錦糸卵、しいたけ、かにかま、わかめと昔懐かし系をいただく。これが、旨い。

 

郷愁の味、とまではいかなくも懐かしい味。どれもどれを邪魔してなく、それぞれが主張するバランス感。やっぱりこれだったし、これでなくては。しいたけの旨味からたまごの甘味、雰囲気を変えるわかめの食感と風味、遅れて最後にカニかまの鮮烈な香りが口に広がり、これがまた麺と合う。お出汁も麺が連れてきてくれるのでスープや水を飲む必要がなく、ただ麺と具材をすくい口に運ぶだけで完璧な料理となっている。

 

 

なぜこんなに旨いのか。今になって思えば具材それぞれのサイズがこの混然一体感を生み出しているような気がする。組み合わせ自体はオーソドックスで誰もが食べたことがあるはずなのにこの破壊力。やはり料理は先鋭され錬成していけば到達できる領域がある。奇をてらう必要はないかもしれない、と改めて思い知らされた。

太陽が南中しかかる暑い朝、小旅行ははじまったばかりだ。